国際人的資源管理(IHRM)部会

異文化経営学会 第3回国際人的資源管理(IHRM)部会のご報告

2024/02/17
理事・国際人的資源管理(IHRM)部会長 古沢 昌之(近畿大学)

2024年2月10日(土)、異文化経営学会第3回国際人的資源管理(IHRM)部会が「人的資本経営について考える」を統一テーマとしてオンラインで開催された。ご多忙中にも関わらずご出席いただいた会員の皆様、そしてゲスト講師として貴重な事例発表を賜った株式会社栗本鐵工所・周藤 雅美 様(同社人材開発部人材開発グループ長)に厚く御礼申し上げる次第である。
以下、詳細については、近畿大学大学院商学研究科博士後期課程の大隅要氏のご寄稿文をご一読願いたい。
なお、国際人的資源管理(IHRM)部会は今後も時宜にかなった統一テーマを設定し、年1回オンラインで開催していく予定である。引き続いてのご支援・ご協力をお願い申し上げる次第である。



<報告と所感> 近畿大学大学院商学研究科博士後期課程 大隅 要

2024年2月10日(土)、Zoomにて第3回国際人的資源管理(IHRM)部会が開催された(参加申込者は31名)。冒頭、本学会理事の古沢昌之IHRM部会長(近畿大学)より、今回の部会では人的資本経営に関する本質的な議論を図っていきたいとの趣旨説明が行われた後、総合司会の岡陽子先生(福岡大学、本学会幹事)、研究報告セッション司会の松原光代先生(近畿大学)の紹介がなされた。
今回の第3回部会の統一テーマは「人的資本経営について考える」であった。
第1報告は、近畿大学の古沢昌之先生より「日本企業における人的資本経営の現状と課題―国際比較調査“Cranet Survey”に基づいて―」をテーマに報告が行われた。古沢先生が実施した調査から、①「人事部門の責任者」、②「人事部門の経営への関与」、③「人事施策の意思決定の責任」、④「教育・訓練」、⑤「人事情報システム」と「ピープルアナリティクス」を巡る状況について報告がなされた。そして、調査結果からの含意(日本企業の特徴)として、①「終身雇用・メンバーシップ型雇用」の影響、②M&A関連への人事部門の「関与度」の低さ、③人事施策の意思決定における人事部門とライン部門の「連携」の少なさ、④人的資本経営に向けた「定量的アプローチ」の遅れが挙げられた。参加者とのQ&Aでは、人事部門の役割、業種別の特色、経営戦略と人事戦略との連動を巡る質疑があり、古沢先生からは人事部門の国際化、人的資本経営の数値化・可視化、CHRO(Chief Human Resource Officer)の育成といった日本企業の課題に関する問題提起があった。
第2報告は、株式会社リロエクセルの村田敏也先生(本学会幹事)より「日本企業の人事や育成担当者との面談から見えてくる人的資本経営の悩みや課題について」をテーマに報告が行われた。村田先生からは、人事部門とともにインプット型からアウトプット型への変容と実践に向けた研修に取り組んでいるとの報告があった。参加者とのQ&Aでは、人材減少社会における高齢者や女性、外国人活用の仕組みやコーポレートカルチャーを生み出すための人事部門の取り組みが議論された。 第3報告は、株式会社栗本鐵工所人材開発グループ長の周藤雅美先生より「Challenge to Changeをめざした栗本鐵工所の人的資本経営」をテーマに報告が行われた。同社では、縦割りの組織風土など社内の課題を解決するためにCIプロジェクトを進め、中期経営計画で策定された「グローバル人材育成プログラム」により、各事業部・部門から推薦されたメンバー計20数名を対象とした海外現地研修や選択型研修、月例勉強会を開催している。また、参加者とのQ&Aでは、エンゲージメント調査の内容・方法や人事評価への反映についての質疑があった。
このあと「非財務情報である人的資本をどのように測定していくべきか」をテーマに、村田先生がコーディネーターとなり、部会参加者が3グループに分かれてブレイクアウトセッションを行った。そして、各グループからは、測定に際しては英語能力やコミュニケーション能力も指標化すべきこと、人事部門の役割や責任の明確化、トップのコミットメントや組織規模の影響といった、グループ討議の内容の報告が行われた。
最後に桜美林大学の馬越恵美子先生(本学会会長)より総括コメントがあり、報告者や司会者への御礼とともに、企業は人的資本の測定を試行錯誤しながら開示すべきこと、また研究者も測定方法を検討していくべきことが述べられた。 今回の部会の所感を述べると、古沢先生の報告では、人的資本経営の要諦として、経営戦略と人事戦略の連動が挙げられ、それを図るにはCHRO(Chief Human Resource Officer)の存在の重要性を指摘されていたが、この連動を通してビジネスに軸足をおいた活動ができることで、従来の労務管理が中心であった人事部門の従業員が、事業への貢献を実感するとともに、エンゲージメントの向上にも寄与できると感じた。



1. と き 2024年2月10日(土) 14:00〜17:30 ※Zoomによる開催
2. 内 容
・統一テーマ:「人的資本経営について考える」
<総合司会> 福岡大学・岡 陽子 氏 (本学会幹事)
<研究報告セッション司会> 近畿大学・松原 光代 氏

【開会挨拶】14:00〜14:05(5分)

・近畿大学・古沢 昌之 氏 (本学会理事・国際人的資源管理(IHRM)部会長)

【研究報告①】14:05〜14:45(報告 25分、質疑応答 15分)

・報告者 近畿大学・古沢 昌之 氏 (本学会理事・IHRM部会長)
「日本企業における人的資本経営の現状と課題―国際比較調査“Cranet Survey”に基づいて―」

=休憩 14:45〜14:55(10分)=

【研究報告②】14:55〜15:35(報告 25分、質疑応答 15分)

・報告者 株式会社リロエクセル・村田 敏也 氏 (本学会幹事)
「日本企業の人事や育成担当者との面談から見えてくる人的資本経営の悩みや課題について」

=休憩 15:35〜15:45(10分)=

【研究報告③】15:45〜16:35(報告 30分、質疑応答 20分)

・報告者 株式会社栗本鐵工所・周藤 雅美 氏(人材開発部人材開発グループ長)
「Challenge to Changeをめざした栗本鐵工所の人的資本経営」

=休憩 16:35〜16:45 (10分)=

【ブレイクアウトセッション】16:45〜17:10(進め方の説明 5分、グループ討議 20分)
・討議テーマ:「非財務情報である人的資本をどのように測定していくべきか」
・コーディネーター 株式会社リロエクセル・村田 敏也 氏 (本学会幹事)

【各グループからの発表】17:10〜17:20(10分)

【総括コメント】17:20〜17:25(5分)

・桜美林大学・馬越 恵美子 氏 (本学会会長)

【諸連絡】今後の活動について 17:25〜17:30(5分)




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