国際人的資源管理(IHRM)部会

異文化経営学会 第2回国際人的資源管理(IHRM)部会のご報告

2022/12/27

理事・国際人的資源管理部会長 古沢 昌之(近畿大学)

2022年12月17日(土)、異文化経営学会第2回国際人的資源管理(IHRM)部会がオンラインで開催された。年末にも関わらずご出席いただいた会員の皆様、そしてゲスト講師として貴重な事例発表を賜った三浦工業株式会社国際推進統括部長の光宗宏晃様に厚く御礼申し上げる次第である。以下、詳細については、京都橘大学の楊秋麗先生のご寄稿文をご一読願いたい。




<報告と所感> 楊秋麗(京都橘大学 経営学部 准教授)

2022年12月17日(土)、Zoomにて第2回国際人的資源管理(IHRM)部会が開催された(参加申込者は38名)。今回の総合司会はECCジュニアの津田優子先生、研究報告セッションの司会は宇都宮大学の鄭安君先生が担当した。

IHRM部会長古沢昌之先生 (近畿大学・本学会理事)の開会挨拶の後、古沢昌之先生より「日本企業における本社人事部門の国際化を巡る状況―企業へのアンケート調査を踏まえて―」、株式会社リロエクセルの村田敏也先生(本学会幹事)より「外国籍社員の日本人上司との研修と実験(実践)からわかったこと」、三浦工業株式会社国際推進統括部長の光宗宏晃先生より「三浦工業におけるグローバル人材育成―グローバルタレントスクールの取り組みから―」という3つの研究報告が行われた。

古沢昌之先生の報告は、これまで他の職能と比べて「海外事業」や「現地人(非日本人)」との関係が希薄とされてきた「本社人事部門」の「国際化」に焦点を当て、日本企業に対するアンケート調査を通して、「本社人事部門の国際化」に関わる状況を「人員構成」と「業務」の両側面から考察すると同時に、事業展開の国際化や国際人的資源管理施策及びその成果等との関係性を統計的に分析したものであった。その結果、「人員構成」面の国際化に関しては、本社人事部門においてバイリンガルな人材が増えつつあるが、それは外国人の人事部社員(逆出向者を含む)を雇用しているというより、海外駐在経験(1年以上)のある日本人の人事部社員や海外留学経験(1年以上)のある日本人の人事部社員が増えたことによるものであろうことが示された。また、今回の調査からは「業務」面の国際化が「人員構成」面のそれよりも加速していることが明らかになった。さらに、「海外事業の質的深化」と「制度的統合への取り組み」が本社人事部門の「人員構成」面の国際化、「海外事業の量的拡大」と「制度的統合」が「業務」面の国際化の促進要因になるとともに、「本社と現地人幹部の信頼関係」「グローバル最適の人材活用・配置」のいずれに対しても、「規範的統合」あるいは「制度的統合」に加えて、本社人事部門の「業務」面での国際化が有意なプラスの影響力を保持していることが述べられた。参加者とのQ&Aでは、本社人事部門の課題、現地にいながら本社人事部員として働く外国人社員の有無などについて意見交換した。

村田敏也先生の報告は、関西大手3企業の外国籍(14ヵ国)社員の日本人上司(25名)を対象に行った共同研修と職場実験の成果についての発表である。日本での外国人労働者数及び外国人雇用事業所数の増加を背景に、今後も外国人社員の活用は、継続的かつ着実に増加していくことが見込まれる一方で、外国人社員の受け入れに対する難しさの声も多く聞こえてくる。外国人社員、つまり、日本文化とは異なる文化的背景を持つ人材の採用を増やし、活躍してもらうためには、日本文化の特殊性を組織側と外国人社員側が理解した上で、どのような関係を構築していくのかについて相互に納得する必要がある。この共同研修と職場実験を通じて、外国籍社員には日本の文化を知ってもらいたい一方で、異文化の価値観を受け入れる制度や仕組みの構築がますます必要であることが明らかになった。参加者とのQ&Aでは、現地人に対する日本研修の有無、国籍を越えた相互理解のための研修だけでなく、世代を越えた相互理解のための研修の必要性などについて意見交換した。

光宗宏晃先生の報告は、三浦工業株式会社のミウラグローバルタレントスクールの設立背景・目的、応募資格・求める人材、カリキュラム、実績に関する事例発表であった。三浦工業株式会社の国内事業の大半はボイラー事業であり、そのうち、貫流ボイラーは国内シェアNO.1を占めている。そして、強みは製造・販売と同時に、メンテナンス事業も展開しているところにある。同社は世界の24ヵの国と地域に17現地法人・8工場で事業を展開し、2022年3月期の海外従業員数は1,826名(全従業員の30%)、海外売上高比率は21%で、今後も海外事業を拡大していく予定である。海外事業拡大に伴い、①海外でミウラの理念共有や会社経営を担う人材が今以上に必要である、②国際感覚を持ち、海外で活躍できる人材を計画的に育成する必要がある、という判断の下で、2017年にミウラグローバルタレントスクールが開校した。毎年15名程度が入校し、3年間にわたる英語学習、外部研修、海外現地法人シンポジウムや海外駐在経験者との座談会への参加、海外現地体験等のトレーニングを受けていく。スクール開校以降、スクール生から累計9名が海外駐在員として海外赴任している。報告後には、光宗先生と村田先生が、駐在員の選抜・派遣、本社人事部門の役割と国際化、外国人実習生の受け入れ等について、トークショーを行った。また、参加者とのQ&Aでは、地方企業ではグローバル人材の離職者が多いという課題、英語が通じない国・地域における語学学習、グローバル人材の育成・選抜に関して意見交換した。

その後は村田先生がコーディネーターとなり、ブレイクアウトセッションを行った。部会参加者が4グループに分かれて、「今回のセッションから見えてくる日本企業の国際人的資源管理の課題及び求められる対応方策」をテーマに討論を繰り広げた。各グループからは「世界が激しく変化している中、日本の良さを残しつつ、本社の役割を検討する必要がある」「英語力のあるマルチプレイヤーの育成が必要である」「世界で戦える人材を育成するため、若者を積極的に海外へ行かせて経験を積ませなければならない」といった意見が述べられた。

最後に学会長の馬越恵美子先生(桜美林大学)より、今回の部会では、1つの共通課題に焦点を絞って、研究者と企業関係者がそれぞれの角度から研究を深めていくことができて良かったこと、参加者の34%は女性、20%は外国人であり、インクルージョンが進んでいることを実感したとのコメントがあった。




1. と き 2022年12月17日(土) 14:00〜17:30 ※Zoomによる開催
2. 内 容
・統一テーマ:
「人事部門の国際化―経営のグローバル化の中で人事部にはどのような変革が求められるか―」

<総合司会>ECCジュニア・津田 優子 氏
<研究報告セッション司会>宇都宮大学・鄭 安君 氏

【開会挨拶】14:00〜14:05(5分)

・近畿大学・古沢 昌之 氏(本学会理事・国際人的資源管理(IHRM)部会長)

【研究報告①】14:05〜14:45(報告 25分、質疑応答 15分)

・報告者 近畿大学・古沢 昌之 氏(本学会理事・IHRM部会長)
「日本企業における本社人事部門の国際化を巡る状況―企業へのアンケート調査を踏まえて―」

=休憩 14:45〜14:55(10分)=

【研究報告②】14:55〜15:35(報告 25分、質疑応答 15分)

・報告者 株式会社リロエクセル 村田 敏也 氏(本学会幹事)
「外国籍社員の日本人上司との研修と実験(実践)からわかったこと」

=休憩 15:35〜15:45(10分)=

【研究報告③】15:45〜16:35(報告20分、トークショー(光宗氏x村田氏)15分、質疑応答15分)

・報告者 三浦工業株式会社 国際推進統括部 統括部長 光宗 宏晃 氏
「三浦工業におけるグローバル人材育成―グローバルタレントスクールの取り組みから―」

=休憩 16:35〜16:45 (10分)=

【ブレイクアウトセッション】16:45〜17:10(進め方の説明 5分、グループ討議 20分)

・討議テーマ:
「今回のセッションから見えてくる日本企業の国際人的資源管理の課題及び求められる対応方策」
・コーディネーター 株式会社リロエクセル・村田 敏也 氏(本学会幹事)

【各グループからの発表】17:10〜17:20(10分)

【総括コメント】17:20〜17:25(5分)

・桜美林大学・馬越 恵美子 氏(本学会会長)

【諸連絡】今後の活動について 17:25〜17:30(5分)




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